2023/11/25 16:27


アロマオイル(精油)の抽出の仕方は、簡単に言うと植物を蒸してそこから立ち上がる湯気を冷やすことで得られます。
植物を鎌で刈り取って、細かく刻んで、釜に放り込んで蒸し上げる。作業は非常に単純です。
単純だから大量に育てて大量に抽出もできる。

以前、この仕事を始める前にアロマの本場フランスで何軒かの蒸留所を見せて頂くことがありました。
広ーい農場にラベンダーがダーっつと植わっていてそれをがーっと刈り取って、トラックに積んで、ドーンと釜に入れる。
足で踏みつけて釜にどんどん入れていく。中には超ハイテクマシーンで抽出している所もありましたが、裏ではやはりワイルドに摘み取られたハーブ達が山積みになっていました。
世界中に香りを届けるのだからそりゃそうなるわけです。そして、蒸留器を探して色々なメーカーを回っているときも、熱帯地方に納品しているメーカーの資料を見せて頂くと、雨ざらしのような施設で作業されている方々が、そうやって沢山香りをどこのだれかが使うために安く買い取り、現地の資源を沢山もぎ取り、ローズウッドやサンダルウッドのように時間をかけて育つ植物は採れなくなったりしています。

香りは沢山はいらないのです。アロマオイルは植物から直接香る濃度の100倍ともいわれています。
直接肌に着けたり、飲んだりとか、たくさん使う事を勧めるメーカーがあるのも事実ですが、1滴1滴の瞬間の香りを感じることこそが
アロマの醍醐味だと私は思っています。

天然100%の香りは、はかなくアッと言う間にわからなくなります。そこが嗅覚=体に優しいのです。
そして、体に影響を及ぼすものだからこそ丁寧に植物を扱いたいと思っています。

私もまだまだ勉強中ですが、と言うか一生学びの連続ですが、毎年抽出するたびに氣付きがあります。
切り取ったハーブの扱い方、どれくらい寝かせるか即抽出するか、釜に入れる植物の状態、水の状態、温度の状態などなど
そして、作業する人間(私)の状態。

以前、糸をつむぐ年配の女性がおっしゃっていたことが引っ掛かりました。ものを作るときはそのものに作り手の念が入る。
だから、気を付けないといけないと。
私は、ほとんどないですが、調子が悪い時は抽出しないようにしています。いい香りを感じるとおのずと嬉しくなって作業をしていましたが、今では光に自分が包まれているイメージをもって作業するようにしています。
いまここに集中することで、私自身も心地よく安定した状態で作業に取り組めています。

人の心に触れる香りを抽出するのだから、少しでもいい状態の物をお届けしたい。
ぽつりぽつりとしか作業は進みませんが、それもまた自然の流れかと思っています。
必要としてくださる方にお届けできることを願って、植物たちと日々過ごしています。